2013/06/09

つないでいくということ

昨日卒業生のラーヴォが遊びに来てくれました。

彼は真面目に仕事を続けて、自費で夜間大学にも通っています。

そして私が帰国する前なども含めて、要所要所で会いにきてくれます。

3時間ほど話し込んだのですが(これはいつものこと・笑)、その中から
2つ、今日は書いておきたいと思います。

たぶん長い文章になりますが、お付き合いよろしくお願いします。


ラーヴォがまだ施設にいる頃、クラスメイトに裕福な男の子がいたそうです。
いまでもカンボジアでは「孤児院」のイメージは、とても貧しく、子どもたちが
食べ物を奪い合うような環境を思い浮かべる人が多いそうです。

その男の子からラーヴォがこんなことを訊かれました。

「孤児院に住んでいるのにどうして君はいつも楽しそうなの?」

そのときのラーヴォは自分が努めてそうしてるわけではなかったので、
なんと答えていいのかわからなかったそうです。

そして時を経て、大学で・・・
偶然にも再会したらしいのです、その男の子と。

そして彼は今のラーヴォの仕事、収入、色んなことを質問したあとで訊いて
きました。

「僕よりも収入が少ないのに、どうして君はそんな満足そうに生活してるの?」

ラーヴォによると彼は、車を何台も所有しレンタルしたり、その他のビジネスで
かなりの収入があるのに、いつも何かに悩んでいて楽しそうに見えないとの
ことでした。

そしてラーヴォはふと思ったそうです。
この質問、前に言われたのと同じだな・・・、と。

昔はっきりと答えられなかったけれど、今回は自分でもなぜだろうと考えて
みて見つけた答えは、

今の自分の環境を満足に思うかどうかは自分次第だ、ということだったそうです。
人から見てどうか、ということではなく、自分が努力し、決定し、そして健康で
それなりに楽しく過ごしてる今を不満に思うことは全然ない、と。

自分をどうとらえるかは自分の心次第なんだと思う、と言っていました。


その話を聞いて、私は
「やっぱりこの子は私に似てるな」
と思ったんです。

カンボジアに嫁ぎ、なりゆきで施設を手伝い、シングルマザーになった今も
施設運営に関わっている私を、ある人は「気の毒に」と思うかもしれません。

「でもお母さんは幸せなんだよね、自分がそう思ってるからそうなんだよ」と
笑って言うと、ラーヴォも深くうなづいていました。



その後話は変わり、あることを知りました。

2年ほど前からラーヴォはいとこの子どもが教員養成校に通えるように支援を
していたそうです。
月々のサポートを賭け事に使われてしまったこともあると笑って話していました。
その子が無事に卒業できるようになったんだ、と。

「自分が少し手助けするだけで彼の人生は違うものになった、僕はそれができて
本当によかったと思っている」と話していました。


その話を聞いて、私はこんな話をしました。


昔おばあちゃん(私の母)がカンボジアに来てくれたとき、まだ当時の施設は
今のように子どもたちがまとまっていたわけではなく、お母さんの悩みは尽きない
毎日だったのよ。

そのときにおばあちゃんが私にくれた言葉。
「この中で一人でも博子の気持ちが伝わる子がいればそれでいいのよ、全員に
わかってもらおうとしなくてもいい。できることを尽くした結果なんだから。」


ラーヴォの話を聞きながらおばあちゃんのこの言葉を思い出したよ。



この話は以前ラーヴォにしたことがあるのですが、もう一度話しながら

おばあちゃんからおかあさん、そしてラーヴォにつないでいくことができてるん
だね、今度はラーヴォのつないだ人がまた誰かにつないでくれたらいいね。

と言いながら、自然に涙が出てきました。

いつもは私の涙を見ていないふりをすることが多いラーヴォが今回まっすぐ
私の顔を見てくれていたのが印象的でした。


ようやく母がくれた言葉に実感が持てるときがきたのかもしれないですね。

私の仕事は伝え、つないでいくこと。
好きなことができて、周りの人に恵まれている今の環境に感謝し、これからも
前に進んでいきたいですね。

ゆっくりでも。


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